2024-01-01から1年間の記事一覧

青山美智子『木曜日にはココアを』を読んだ

青山美智子さんによる小説『木曜日にはココアを』。12の物語で構成される、心温まる短編集だ。この物語で感じるのは、他人と自分の人生は実は地続きなのかもしれないーーそういう可能性である。 木曜日にはココアを (宝島社文庫) 作者:青山美智子 宝島社 Ama…

“母”にならない姉の妹ーー映画『違国日記』

6月7日より、映画『違国日記』が公開されている。両親を交通事故で亡くした15歳の朝と、人付き合いが苦手な小説家の槙生。二人の不器用な同居生活を優しく綴った物語である。 槙生に扮するのは新垣結衣。槙生のぶっきらぼうだが、どこか温もりと芯のある絶妙…

『告白 コンフェッション 』で罪悪感の成れの果てをみた

福本伸行先生とかわぐちかいじ先生の共作が実写化。タイトル『告白 コンフェッション 』は、ある告白を言ってしまった男と聞いてしまった男の攻防を描いた物語である。本作は、主演の生田斗真とヤン・イクチュンのほぼ二人芝居で成り立っている。舞台は雪山…

『シティーハンター』から『ブルーロック』まで。観た映画企画パート1

観た映画がたまるたびにレビューを更新していく企画。新旧問わず、映画館で鑑賞したものからNetflixその他動画配信サービスでみたものまでごちゃまぜです。 最近は、落ち込む時間があるなら1本でも映画なり漫画なりドラマを見よう。もっぱらそんなマインドで…

旅行を頓挫しがちな私が年1で訪れる場所「倉敷美観地区」

私は旅行の計画を実行しないことがよくある。この前は東京へ行くのをやめた。ひとり旅だから誰にも迷惑はかからないのだれど、それでもなぜか自己嫌悪に陥ってしまう自分がいる。 旅行に行きたいのは癒されたいからだ。ということは旅行に行けば癒されると思…

千早茜『正しい女たち』を読んだ

短編小説を読んでいると、物語ごとにあらゆる人間が出てくる。小説を介して彼女たちの生活を覗くと、本当に人生とは、生き方とは、人の数だけあるのだなあということを思い知らされる。 そのひとつひとつに心を揺らされて、背中を押されて、突き動かされて。…

奥田英朗『イン・ザ・プール』を読んだ

小説初心者に作品をおすすめするなら、きっと『イン・ザ・プール』を最初に勧めると思う。語彙力がなくて申し訳ないのだけれど、それくらい本当に面白い。面白いと同時に、すごく肩の力が抜ける本でもある。 お気楽人間な精神科医・伊良部の奇行に付き合って…

辻村深月『鍵のない夢を見る』を読んで

たとえば、それまでいい妻だったのに、急にとんでもない悪女ということが発覚したり。あるいは、これまで可哀想な女生徒だと思っていたのに、実は順風満帆な人生を送る勝ち組だということがわかったり。こんな感じで(上記のような内容ではないのだけれど)…

村上春樹『パン屋再襲撃』を読んで

なぜ『パン屋襲撃』を手に取ったのかというと。あるレビューサイトで「"オズの魔法使いにでてくる竜巻のように空腹感が襲いかかってきた"という表現が素敵だった」との感想が書かれていたから。 なんとなく、自分の文章が同じような言い回しばかりな気がして…