完走したドラマ2024年秋

2024年秋クールに放送されたドラマを淡々と語っていく本稿。完走したドラマの総括を綴っていきます。各話の感想はX<@sncojp>でちょくちょく更新しているので、こちらもチェックしていただけると嬉しいです。

この秋完走ドラマは10本。すでに冬ドラマが始まっていますが、綴らせてください。10本沼から抜け出せない。本当はもう5本は観たい!!!!

無能の鷹

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「ITって何?」「燃費って“もえぴ"?」バリキャリっぽいのにとにかく仕事ができない鷹野が繰り広げる脱力系・お仕事コメディ。まず、主演の菜々緒がハマりすぎていた!“有能そうなのに無能”。少しズレれば世界観が不成立になりかねないのに、確かな容姿の説得力で完璧に鷹野を体現していた。鷹野が起こすミラクルはまるですれ違いコントのようで、今期一番声を出して笑った気がする。お仕事ドラマといえばプロフェッショナルだったり下剋上だったり鼓舞させられるものが多い印象だったけれど、本作は先輩が新入社員をキビキビ鍛え上げるわけでもなく、ただ仲間内にいれて見守る。だからお仕事なのに癒やされる。いっさい疲れない、笑えるお仕事ドラマってすごく貴重だなと思った。

民王R

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総理大臣がまるっと誰かと入れ替わる痛快政治エンタメ。入れ替わりという突飛な設定を皮切りに、若者の貧困や妊婦と仕事の両立など、今の日本の課題を明らかにしながらメスを入れていく。ディスりはポップに、でも訴えは真摯に。もっとコメディに徹してほしいという声もあったようだけれど、『民王』は社会に一石を投じるドラマであってほしいので、いい塩梅だったと思っている。入れ替わりモノは高い演技力を有するが、エンケンさんを含め入れ替わりキャスト全員最高だった。とくに、初回のスタートダッシュを切ったあのちゃんの功績はでかい!次は映画化しそう。

高杉さん家のおべんとう

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ある事情で共同生活を始めることになった地理学研究に携わるハルと中学生の姪・久留里が、“お弁当”を通じて心を通わせていく物語。豪華絢爛な料理や突飛なレシピが披露されるわけではない。でも、本作で登場する「かにかま入り卵焼き」や「ゆかりふりかけのいなり寿司」といった“家族の味”は、どこか心が解けるようなやわらかさがあって思わず真似したくなる。ハルと久留里の関係性を、スピードを緩めてじっくり描いてくれたのもよかった。恋愛を介さない「尊さ」に、こんなにもツボを刺激されるなんて!このドラマを観ながらご飯を食べるのが今期1番の至福でした。

離婚弁護士スパイダー〜慰謝料争奪編〜

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結婚=幸せではない現代には、夫婦の数だけドラマがある。離婚専門弁護士・美雲が人々に寄り添うリーガルエンターテインメント。高橋メアリージュンは、本当にTHE・かっこいいキャラクターをやらせたらピカイチ。事例は経済的DV、女性と偽装結婚をするゲイ、托卵する妻など多岐にわたる。イントロでは「悩めるすべての女性に」との文言があったが、男性が相談者のケースも扱われていて誰も取りこぼさなかったのが素晴らしい。内容は濃いのにわかりやすくて、20分ドラマ枠の底上げをしてくれた気がする。

オクラ〜迷宮入り事件捜査〜

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熱血昭和刑事とタイパ重視の令和刑事が、未解決事件に挑む刑事モノ。主人公が“ダークヒーロー”だったり、超展開が連続して巻き起こる作風はまさに武藤将吾脚本だ!と興奮した。少々荒さを感じたけれど、勢いもあって、最後まで弛まず視聴し続けられたと思う。このドラマはとにかく反町隆史杉野遥亮のバディがとても魅力的だった。役柄的に「超仲良し!」的な場面はなかったけれど、ちょっとずつ近くなっていく距離がすごーーーーくエモかったの。公式のコメントとかを見ていると、反町さんが杉野さんを気にいっている感じが滲み出ていて、そこもまたツボでした。ベテラン俳優と若手俳優の組み合わせって、“バディ”としては意外となかったかも。こういう組み合わせをもっと見たいと思ったし、お二人をキャスティングした方々に心からのありがとうと盛大な拍手を送りたい。

ちなみにオクラは「映画チャンネル」さんで全話レビューしております!▼

わたしの宝物

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深夜帯ではラッシュの不倫ドラマ。ゴールデン帯でやるとこんなにも大人な風味になるんだと膝を打った。『昼顔』『あなして』に続いて三竿玲子が描いたテーマは、“托卵”。托卵を選ぶ主人公・美羽を視聴者にどう納得してもらうかが課題だったように思うけれど、「せざるを得なかった女性」として描いたことでドラマ的には十分受け入れやすかった。すごく共感してしまうようなキャラクターはいないものの、すぐ隣で事が起きているようなリアルさに毎話戦慄していたのを覚えている。個人的には、このドラマは一貫して家族の“再生”を描いていたんじゃないかと考えていて。美羽が元サヤに戻り、冬月が当て馬のようになった結末からもやっぱりそう思う。そして、田中圭がよすぎましたよね(クソデカボイス)!!!!宏樹は最初はモラハラ、のちに改心するキャラクターだからいろいろ調整をしていたとインタビューでおっしゃられていて、才能もあるけれど演技って技術なんだ…と唸らされました。スゴイの一言…。

ちなみにちなみに『わたしの宝物』も全話レビューしています!▼

つづ井さん

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筋金入りのオタク女子・つづ井さんと前世からの友である Mちゃん、オカザキさん、ゾフ田、橘たちが織りなすなんでもない推し活ライフを描いたドラマ。「つづ井さん」のいいところは、同じ畑ではない他ジャンルのオタクたちが仲良く肩組んで生きているところ。こんなにも各々を肯定し合った健やかな推し活生活、観ているだけで元気が出る。みんなと友達になりてえよ。原作のエッセイコミックスを読んでいたので、推しの身長と同じ高さの壁にマステを貼ってウハウハするとか、鼻にイヤホンを装着して自分の口から推しのボイスを垂れ流すとか…。至極のエピソードが映像で見られて感無量。たくさん笑わせてもらいました。

嘘解きレトリック

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やたらと鋭い観察眼をもつ貧乏探偵・左右馬とウソを聞き分ける能力を持つ鹿乃子。ウソとホントが入り混じる、異色コンビが織りなす探偵活劇。月9には珍しい、昭和初期を舞台にした時代モノのミステリーが描かれる。今なお恋愛ドラマのイメージがこびりつく月9に、風穴を開けるかのように果敢に挑む制作陣の矜持を感じた。“嘘”という題材1本で貫くのが純粋に面白いし、人って嘘が当たり前だからこそ成り立つんだよなあ、とも。優しさ、傷つかないため、利益を得るためなど、嘘をつくのはさまざまな事情があるが、最終話の「嘘をつくよ、心を込めて」はさすがに悲しすぎた。みんな一件落着みたいな顔してたけど…。鈴鹿央士&松本穂香のペアは、ドラマの雰囲気に合っていてとっても癒された。左右馬と鹿乃子のラブをほのめかしながらも、決定的なものは描かなかったのも推せる。鹿乃子にはずーっと「私は助手として…!」ってしててほしい。そんで左右馬はそんな鹿乃子をニンマリしながら見守っててほしい。

全領域異常解決室

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科学では解明できない“不可解な異常事件”を解決する「全領域異常解決室」の活躍を描くドラマ。『TRICK』『SPEC』に続くオカルト作品が誕生!だけどこの両作品とはまた毛色が違うのだ。「神隠し」「シャドーマン」「キツネツキ」といった“超常現象”は人為的なものだった…と揺さぶりながら、第5話以降は「全欠」みんな神々、ヒルコと神の全面戦争など、どんどん面白さが加速。超能力などただ漠然と人間を超越した存在ではなく、明確に“日本神話の神々”をモチーフにしてくれたのも馴染みやすくてよかったし、視聴者の心を鷲掴みした要因だとも思う。設定はぶっ飛んでいるが、決して無理やり感ないのも、地に足ついた内容なのもすごい。個人的2024年ベストドラマでした。先述した『SPEC』や『地獄先生ぬ~べ~』『ポンキッキーズ』の「花子さんがきた!!」とか特別な力×オカルトモノが好きな方はぶっ刺さると思います!!もちろんぶっ刺さりましたとも!!京都編待ってます!!!

海に眠るダイヤモンド

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1955年からの端島と現代を結ぶ、70年にわたる愛と友情、そして家族の物語。期待値高かったけれど、やっぱり最初から最後まで最高でした…。最終回観るのに随分と間が空いてしまったが、端島で暮らす鉄平たちや現代の玲央・いづみのこれまでの歩みが走馬灯のように蘇ってきて落涙させずにはいられなかった。叙述トリックも秀逸すぎて。あの鉄平は朝子の記憶のなかの鉄平だったのね。血縁関係もなければ、似てもいない玲央が、鉄平の影を追い、どんどん人生を変えられていく。結局は偶然によるものなのかもしれないけれど、時代も場所も違う人が、現代のやるせない若者を生き生きとさせる。これってものすごく価値のある可能性だ。いつまでも心が温かい。